2015/11/01

木島平村でのこと







6月から7月にかけての一ヶ月間、息子と2人で、長野県木島平村へアーティストインレジデンスにいってきました。
今年はなんだか怒涛の1年で、こんなに自分のやりたいことをやらせてもらえる日々がくるとはおもいもよらず、今日になってやっと、ふう、と一息、ふりかえることができました。
ありがたや人生。村でのことは、ほんとに文におこしたいことが多くて多くて、どうしよう、いつやろう、とフガフガしてるうちに時間が経っていきます。
村で書いた、文章をまずは発表したいと思います。
そんな仰々しくするまでもないですが、わたしにとっての村人へのラブレターですので、発表、とゆうのがふさわしい?





なかなか眠れない息子をおぶい、
もう暗くなった村へ、自転車をこぎました。
はじめてここへ来た時、そのよるも、息子はなかなかねむれずに、ずっとずっと、泣いていました。
彼を背中におぶい、はじめての、村の暗闇のなかを散歩しました。
遠くに光る街のあかり、道の脇をドウドウと流れてゆく水の音、田んぼのカエルや虫の、電子音のような大きな鳴き声に包まれながらとぼとぼ歩く。
暗い道の脇ににうかぶ花や木の影が、おそろしい生き物のように見え、心臓がぎゅっとするのをこらえながら、泣き続ける子どもを背に、
よろよろと不安な気持ちをかかえ散歩をしたのをおぼえています。
3週間たち、いま、夜の影に覆われた村を自転車をこいでゆっくりとはしっています。
遠くに見える街のあかり、ドウドウと流れる道の脇の、とうめいな水。
そこは、つねに視界のどこかにホタルがちらついている。
昼間白く光っていたあじさいは、夜の青をかぶって、にぶく、また違うひかりを発している。
神社の周りをかこった大きな黒い影はうつくしい、立派に神社をまもる杉の木。ここは、あのひとのすてきな庭。
わたしは知ったのです、このすこしの間、ここに過ごしたことで。
彼も知ったのです、このすこしの間、
ここに過ごしたことで。
背中にあたたかく、いつのまにか安心してねむったこの子と、暗い闇のなかを、しずかにはしって、ここへ暮らすひとたちの顔を思い浮かべていました。

岡本 果倫