2010/02/15

マリー

全長20m、高さ10mの水槽を見上げている。
水槽の上の部分は開いていて、白い大きな、浅い階段が水槽の中に流れ込んでる。
その階段には5組ほどの男女が居て、足ひれをつけて、競技が始まるのを待ってる。笑顔。
その競技は、気を抜くと水に沈んでいってしまうのを、片方がきちんと気づかせ、浮かんだ状態を続ける、というルールらしかった。

その水槽を見上げる前に、私は小さなガラス張りの部屋で、対決をしていました。
相手は60代の雪だるまみたいなおじさんで、目が大きく、白髪で、眉は黒かった。
どんな対決かってゆうと、ライラック色の、コショウを相手にふっかける、ってゆう対決で、くしゃみ、鼻水で、多分負け

砂浜のように増えてゆくコショウに埋もれながら、じっと相手の目を見つめ、
ライラックコショウを手に盛り盛り、ぱさ、ぱさ、とかけ合いました。
静かな時間でした。
そして地面にあぐらをかいた状態の眉黒おじさんの後ろには、3段階くらい濃いライラック色の、スポンジだか、マシュマロのようなものが増えていきました。
いどんでも、いどんでも、二人の対決は終わらなかった。私は立ち上がって、波の音を聞いて、その場を去りました。

水槽を見上げてから、私は夜へ足を進めました。夜へは、すこし歩けば簡単に行けるのです。
夜は来るものではなく、こちらから向かうものでした。

夜の、暗い道を、藤沢へ向かって歩いていくと、広い古めかしいつくりの商店街があって、
そこですこし休憩をしました。
窓の外は昼で、店のすぐ横に建っているおんぼろい小屋に、黒いゴスパンク風のファッションの人たちが入ってゆくのを見ました。
よく見る古道具屋の、金の亡者で有名なおばさん、エグザイルというバンドの肌の異様に黒い歯のきれいな男性、アゲハ嬢、アゲハ嬢は頭にトーテムポールのような塔を髪の毛の素材でたてていて、
それは小屋の屋根に達していた。上の方は接着剤のなまなましい爪痕が残っており、黒いベルベットのリボンや、プラスチックの真珠、ラメパウダー、黒いレース、などがべたべたとボンドの半透明のつやをひらつかせながら、くっついていました。
マリーアントワネットのファッションセンスも、時代を超えてこんなチープに変化を遂げたんだな。けれど、それでも彼女のセンスに共感して模倣する人間が、時代を超えて居るってことは、ほんとうにおもしろいな、と思いました。そのアゲハ嬢は、マリーアントワネットを、知らないかもしれないけれど。

店を出てしばらく歩いてゆくと、持っていた紙袋が1つ増えていることに気がつきました。
見覚えのない紙袋をのぞくと、粉砂糖、たまご、牛乳、きゅうりの漬けなどが入っていて、
どうしよう、さっきの店で隣に座っていたおばさんのを一緒にひろってきちゃったんだわ

そして、なんだかいやあな気分になってると、目が開いて、
私は起きました。久しぶりにゆっくりと眠りました。
でも、やっぱりすこし疲れているようです。